韓国で「推理小説の父」と呼ばれる金来成(キムネソン)(1909~57)による最初の長編「白仮面」を翻訳し、論創社から単行本を出した。探偵小説家にして名探偵の劉不亂(ユブラン)が活躍するシリーズの第1作で、正体不明の怪盗・白仮面との攻防を描く。「テンポも速いし、いま読んでもそんなに古くは感じられない。連載当時、人気だったこともうなずけます」と話す。
神戸市で図書館司書を続ける傍ら、88年のソウル五輪を機に韓国語に興味を持ち、ほぼ独学で身につけた。韓国の推理小説に関心を持ち、翻訳に着手。韓国推理作家協会が出した年間傑作選を2002年に翻訳出版したことを皮切りに、定年後のいまも翻訳を続ける。
金来成は早稲田大学に留学中だった35年、探偵小説専門誌「ぷろふいる」でデビュー。江戸川乱歩を師と仰ぎ、帰国後も探偵小説を書いた異色の経歴を持つ。これまでも、同じ劉不亂シリーズの「魔人」や作品集「金来成探偵小説選」(いずれも論創社)を翻訳してきた。
「数は少ないけれど、埋もれた作品はある。探偵小説を手がかりに、当時の世相を知りたい」(山崎聡)=朝日新聞2019年2月6日掲載
編集部一押し!
- ひもとく 民藝の魅力 不完全を許容する美しさとは 鞍田崇 鞍田崇
-
- 図鑑の中の小宇宙 「すごすぎる絵画の図鑑」 フェルメールの名画の黄色の正体は…… 岩本恵美
-
- 鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第13回) 「女性は存在しない」!? メイル・ゲイズ(男性の眼差し)を超えて 鴻巣友季子
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「陰陽師0」奈緒さんインタビュー 平安時代の女王役「負の感情を『陽』に。自分の道は変えられる」 根津香菜子
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「湖の女たち」主演・福士蒼汰さんインタビュー 刑事の歪んだ支配欲、感覚で演じきった 根津香菜子
- 本屋は生きている でこぼこ書店(埼玉) 本を介して人が集まり、学ぶ場所。元バスケ青年が始めた小さな挑戦 朴順梨
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社